親の物忘れや薬の飲み忘れが増えると、「認知症かもしれない」と不安になります。ただし、家族だけで病名を決めつける必要はありません。最初にやることは、受診先や施設を急いで探すことではなく、いつ、どこで、何が起きたかを具体的に記録することです。

同じ「物忘れ」でも、単なるうっかりなのか、生活に支障が出始めているのかで、相談時に伝える内容は変わります。記録があると、かかりつけ医、地域包括支援センター、認知症疾患医療センターなどに状況を説明しやすくなります。

この記事では、親が認知症かもと思ったときに、家族が最初に見る変化、記録すること、相談先、本人への話し方を整理します。医療判断や診断は、医師など専門職に相談してください。

最初にやることは「診断」ではなく「記録」

家族が最初にすることは、「認知症だ」と決めることではありません。気になる変化を、できるだけ具体的な事実として残すことです。

たとえば、次のように書きます。

  • 6月3日の朝、薬が2日分残っていた
  • 先週から同じ請求書を何度も確認している
  • 夕方に電話すると、通院日を忘れていた
  • 買い物に行ったのに、同じ食品を何個も買ってきた
  • 以前より怒りっぽくなり、電話をすぐ切ることが増えた

「最近おかしい」だけでは、相談先で状況が伝わりにくくなります。いつから、どの場面で、どのくらいの頻度で、生活にどんな支障が出ているかを残しておくと、次の行動を決めやすくなります。

家族が気づきやすい変化

認知症かどうかは医師が判断することですが、家族が相談のきっかけとして気づきやすい変化はあります。

代表的なのは、次のような変化です。

  • 同じ話や質問を繰り返す
  • 薬の飲み忘れが増える
  • 通院日や約束を忘れる
  • 財布、鍵、保険証などをよく探している
  • 支払い、通帳、請求書の管理が乱れる
  • 料理、買い物、片付けの手順が変わる
  • 怒りっぽい、不安が強い、閉じこもりがちになる
  • 道に迷う、運転や駐車のミスが増える

大事なのは、親の「いつもの状態」と比べることです。昔から忘れ物が多い人もいます。一方で、これまで問題なくできていた通院、服薬、買い物、お金の管理が急に崩れてきた場合は、早めに相談する価値があります。

記録するときの項目

メモはきれいな表でなくても構いません。スマホのメモ、ノート、家族共有のドキュメントで十分です。

最低限、次を残します。

項目書き方の例
いつから5月下旬から、今月に入ってから
どの場面で薬、通院、買い物、電話、料理、支払い
頻度週1回、ほぼ毎日、同じ日に2回
何が起きたか薬が残る、同じ物を買う、請求書をなくす
生活への支障通院できない、食事が偏る、支払いが遅れる
本人の困りごと不安がる、怒る、探し物で疲れている
家族の困りごと遠方で確認できない、電話が増えた

家族の感想を書く場合も、事実と分けると伝わりやすくなります。「怒りっぽくなった」だけでなく、「請求書の話をすると大声になる」「お金の話を避けるようになった」のように、場面を添えます。

最初の相談先

相談先は、親の状態や相談しやすさによって選びます。1か所だけに絞る必要はありません。

かかりつけ医

普段の病気、服薬、体調を知っている医師がいる場合は、かかりつけ医に相談しやすいです。家族が同席できるなら、記録したメモを持参します。

本人が受診を嫌がる場合でも、家族だけで事前に相談できるか、医療機関へ確認してみる方法があります。個人情報の扱いは医療機関によって異なるため、可能な範囲で相談します。

地域包括支援センター

地域包括支援センターは、高齢者の総合相談窓口です。厚生労働省は、認知症に関する相談先として地域包括支援センター、認知症疾患医療センター、かかりつけ医などを案内しています。

地域包括支援センターでは、保健医療、介護、福祉サービス、制度利用に関する相談ができます。親の住所地を担当するセンターを、市区町村の公式サイトで確認します。

地域包括支援センターに初めて相談する流れは、地域包括支援センターに相談するタイミングでも整理しています。

認知症疾患医療センター

認知症疾患医療センターは、認知症に関する専門的な医療相談や診断などを担う医療機関です。地域によって設置状況や受診方法が異なります。

いきなり予約するより、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談し、紹介や受診方法を確認するほうが進めやすい場合があります。

自治体の高齢福祉窓口

市区町村の高齢福祉課、介護保険課なども相談先になります。地域包括支援センターの担当区域、認知症相談、見守り制度、介護保険の申請窓口を確認できます。

相談前に用意するもの

相談や受診の前には、次をそろえておくと話が早くなります。

  • 気になる変化のメモ
  • 親の住所、生年月日、家族構成
  • 通院先、持病、既往歴
  • 服用中の薬、お薬手帳
  • 健康保険証、介護保険証の有無
  • 緊急連絡先
  • 家族が支援できる頻度
  • 本人が嫌がっていること、困っていること

遠方に住んでいる場合は、電話相談の時点で完璧な情報がそろっていなくても構いません。「今分かっていること」と「分からないこと」を分けて伝えます。

本人へどう話すか

本人に伝えるときは、病名を決めつけないことが大切です。

避けたい言い方は、次のようなものです。

  • 認知症なんじゃないの
  • 何回言えば分かるの
  • もう一人では無理だよ
  • 病院に行かないと大変なことになるよ

こうした言い方は、本人の不安や反発を強めやすくなります。

代わりに、体調確認や生活の困りごととして話します。

  • 最近疲れやすそうだから、一度先生に相談してみよう
  • 薬が残っているみたいだから、飲み方を確認してもらおう
  • もの忘れ外来もあるから、念のため相談してみない
  • 家族も心配しすぎかもしれないから、専門の人に聞いてみたい

本人が強く拒否する場合は、無理に連れて行く前に、家族だけで地域包括支援センターやかかりつけ医へ相談します。家族だけで抱え込まないことが重要です。

生活面で早めに確認すること

相談や受診と並行して、生活の安全も確認します。

通院と服薬

薬の飲み忘れ、重複、通院忘れがある場合は、服薬カレンダー、薬局への相談、家族の確認頻度を見直します。薬の変更や中止は自己判断せず、医師や薬剤師に確認します。

緊急連絡先

親の家に、緊急連絡先、かかりつけ医、服薬情報をまとめた紙を置いておきます。自治体によっては、救急医療情報キットのような仕組みがあります。

お金の管理

請求書、通帳、キャッシュカード、暗証番号、保険、年金通知などの管理が乱れていないか確認します。詐欺や不要な契約のリスクも上がるため、家族で見る範囲を早めに話し合います。

判断能力の低下が心配な場合は、成年後見制度などが関係することがあります。個別の判断は、自治体、地域包括支援センター、司法書士、弁護士などに相談してください。

見守り

一人暮らしや遠方介護では、電話だけで状態を把握しきれないことがあります。家族の訪問、近隣との連絡、自治体の見守り制度、民間の見守りサービスを組み合わせて考えます。

見守りサービスを比較する前に、高齢者見守りサービスの月額料金を比較で、できることとできないことを確認しておくと整理しやすくなります。

運転

車を運転している場合は、事故、道迷い、車庫入れの失敗、交通違反が増えていないか確認します。75歳以上の運転免許更新では認知機能検査が関係します。運転継続の判断は、本人の生活手段にも関わるため、家族だけで押し切らず、医師や警察、自治体の相談先も確認します。

火の元と転倒

コンロ、ストーブ、浴室、階段、玄関まわりを確認します。焦げた鍋がある、ガスの消し忘れがある、夜間に転びそうになるなどの変化があれば、早めに対策します。

家族会議で決めること

親の変化に気づいた段階で、家族内の役割も整理します。

  • 誰が親へ話すか
  • 誰が通院に同席するか
  • 誰が地域包括支援センターへ相談するか
  • 誰が薬、支払い、郵便物を確認するか
  • 緊急時に誰へ最初に連絡するか
  • 遠方の家族は何を担当するか

一人の家族だけが、電話、通院、支払い、見守りを抱えると続きません。できるだけ早い段階で分担を決めます。

よくある質問

もの忘れがあるだけで受診したほうがいいですか

受診が必要かどうかを家族だけで判断しきれない場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談してください。物忘れ以外に、服薬、通院、買い物、支払い、運転、火の元など生活への支障があるかを見ると整理しやすくなります。

本人が受診を嫌がる場合はどうすればいいですか

無理に連れて行く前に、家族だけで相談できる窓口を使います。地域包括支援センター、自治体の高齢福祉窓口、かかりつけ医に、今の状況を伝えて進め方を相談します。

認知症疾患医療センターへ直接行けばいいですか

地域や医療機関によって受診方法が異なります。かかりつけ医からの紹介が必要な場合もあるため、事前に確認してください。地域包括支援センターに相談すると、地域の受診先や制度につながりやすくなります。

家族だけで親のお金を管理してもいいですか

日常的な支払い確認と、財産管理や契約行為は分けて考える必要があります。本人の判断能力が低下している場合は、成年後見制度などが関係することがあります。自己判断で大きな契約や処分を進めず、専門窓口へ相談してください。

まとめ

親が認知症かもしれないと思ったとき、最初にやることは、家族だけで病名を決めることではありません。具体的な変化を記録し、かかりつけ医、地域包括支援センター、認知症疾患医療センターなどに相談できる状態を作ることです。

記録するのは、いつから、どの場面で、どのくらいの頻度で、生活にどんな支障があるか。本人を責めず、家族だけで抱え込まず、早い段階で相談先を持っておくことが、次の行動を取りやすくします。