最初にやることは、施設探しではなく「事実確認」です

親の介護が気になり始めたとき、いきなり老人ホームや見守りサービスを探す必要はありません。最初にやるべきことは、親の状態、生活の変化、相談先、家族の役割を整理することです。

介護は、ある日突然「サービスを申し込めば解決する」ものではありません。地域包括支援センターに相談するにも、要介護認定を申請するにも、会社へ介護休業や介護休暇の相談をするにも、親の状態を具体的に説明できるメモが必要になります。

この記事では、介護が本格化する前に確認したいことを、今日、1週間以内、1か月以内の順番で整理します。

この記事で分かること

  • 親の介護準備で最初に確認する7項目
  • 地域包括支援センターへ相談する前にメモすること
  • 要介護認定を申請する前に知っておきたい流れ
  • 仕事と介護を両立するために確認する制度
  • 介護費用と親のお金まわりで早めに見ること
  • 見守り、実家整理、固定費見直しへ進むタイミング

まず確認する7項目

介護準備の入口では、次の7つを確認します。

  1. 健康状態
  2. 通院・服薬
  3. 緊急連絡先
  4. 生活動作
  5. 金銭管理
  6. 住まいの安全
  7. 家族の役割分担

ポイントは、主観的に「最近ちょっと心配」と書くのではなく、できるだけ具体的な事実にすることです。

たとえば、歩く速度が落ちた、立ち上がるときに何かにつかまる、買い物に行かなくなった、同じ話を繰り返す、薬の飲み忘れが増えた、預貯金の出し入れを面倒がるようになった、といった変化です。

自治体の基本チェックリストや要介護認定の認定調査でも、歩行、買い物、預貯金管理、転倒不安、物忘れなどは確認対象になります。相談時に伝わりやすいよう、最近3か月の変化をメモしておきます。

通院・薬・緊急連絡先は1枚にまとめる

最初に作るべきメモは、親の医療情報と緊急連絡先です。

最低限、次の項目を1枚にまとめます。

  • かかりつけ医
  • 通院中の診療科
  • 薬局
  • 服薬中の薬
  • 持病
  • 健康保険証や介護保険証の保管場所
  • 緊急連絡先
  • 家族の連絡順

自治体によっては、救急医療情報キットや高齢者あんしん情報キットを配布しています。これは、かかりつけ医、持病、服薬、緊急連絡先などをまとめ、救急時に見つけやすい場所へ保管するためのものです。

同じ仕組みが親の自治体にあるかを確認し、なければ自分たちで同じ情報を紙や共有メモにまとめておきます。

最初の相談先は地域包括支援センター

親の介護準備で最初に確認したい相談先は、親の住所地を担当する地域包括支援センターです。

地域包括支援センターは、高齢者の総合相談窓口です。介護、福祉、保健、権利擁護、介護予防などについて相談できます。自治体によって名称や担当エリアの調べ方は異なるため、親が住んでいる市区町村の公式サイトで確認します。

相談前には、次の内容をメモしておくと話が早くなります。

  • いつから何が変わったか
  • 1人でできること、危ないこと
  • 転倒、救急搬送、入院の有無
  • 通院先、服薬、持病
  • 家族が支援できる頻度
  • 本人の希望
  • 不安なことが認知、通院、お金、住まい、仕事のどれに近いか

まだ介護が始まっていない段階でも、相談して構いません。むしろ、早い段階で相談先を確認しておくと、要介護認定や介護サービスが必要になったときに動きやすくなります。

要介護認定は、必要になったら早めに動く

介護保険サービスを利用するには、原則として要介護認定または要支援認定が必要です。

大まかな流れは次の通りです。

  1. 市区町村の介護保険窓口などへ申請する
  2. 認定調査を受ける
  3. 市区町村が主治医意見書を依頼する
  4. 一次判定と介護認定審査会の二次判定が行われる
  5. 認定結果が通知される
  6. ケアプランを作成してサービス利用へ進む

自治体の案内では、申請から結果通知まで通常30日ほどとされる例があります。ただし、必要書類、申請窓口、郵送可否、本人確認書類などは自治体によって異なります。実際に申請する前には、親の住所地の自治体公式ページを確認してください。

主治医が親の状態を把握しているか確認する

要介護認定では、主治医意見書が使われます。市区町村が主治医に作成を依頼しますが、主治医が最近の状態を把握していないと、実態が伝わりにくくなります。

しばらく受診していない場合や、物忘れ、転倒、服薬、生活の変化が気になる場合は、早めに受診し、家族からも気になる点を伝えておきます。

認定調査では、調査員が心身の状態や介護状況を確認します。当日だけ親が普段よりしっかり受け答えすることもあります。家族が同席できる場合は、普段の困りごとを補足できるようにしておくと安心です。

要支援と要介護で相談先が変わる

認定後のサービス利用では、要支援1・2と要介護1〜5で進み方が変わります。

要支援1・2の場合は、地域包括支援センターが介護予防ケアプラン作成の中心になります。要介護1〜5の場合は、ケアマネジャーに相談し、ケアプランを作成してサービス利用へ進む流れが一般的です。

ただし、実際の運用は自治体や本人の状況によって異なります。最初は地域包括支援センターに相談し、サービスが具体化する段階でケアマネジャーにつながる、と理解しておくと分かりやすいです。

介護保険で使えるサービスの全体像

介護保険サービスは細かく分かれていますが、最初は次のように大きく分けて見ると整理しやすくなります。

  • 自宅で受けるサービス
  • 日帰りで通うサービス
  • 短期間泊まるサービス
  • 福祉用具の貸与・販売
  • 住宅改修
  • 地域密着型サービス

たとえば、訪問介護、通所介護、ショートステイ、福祉用具、住宅改修などがあります。最初からすべてを覚える必要はありません。親の困りごとが、移動、入浴、食事、服薬、見守り、家事、住まいの安全のどこにあるかを整理し、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談します。

仕事を辞める前に、介護休業と介護休暇を確認する

働いている家族は、介護離職を避ける視点を最初から持つ必要があります。

介護休業は、対象家族1人につき3回、通算93日まで取得できる制度です。厚生労働省は、介護休業を「自分が介護をするためだけの期間」ではなく、仕事と介護を両立できる体制を整えるための準備期間と位置づけています。

介護休暇は、対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日まで取得でき、時間単位で使える制度です。

さらに、短時間勤務等の措置、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限などもあります。2025年4月1日からは、介護離職防止に関する会社側の個別周知や意向確認、雇用環境整備なども強化されています。

会社に相談する前には、次の情報を整理しておきます。

  • 親の住所と同居・別居状況
  • 通院頻度
  • 今後3か月で起こりそうな手続き
  • きょうだい等の協力可否
  • 介護保険申請の要否
  • 緊急時に呼び出される可能性

お金まわりは「介護費」だけを見ない

介護保険サービスの自己負担は、原則1割です。ただし、一定以上の所得がある65歳以上の人は、2割または3割になる場合があります。実際の負担割合は、介護保険負担割合証で確認します。

また、同じ月の介護保険対象サービスの自己負担が一定額を超えた場合、高額介護サービス費として超過分が支給される仕組みがあります。ただし、福祉用具購入費、住宅改修費の自己負担、食費、居住費、日常生活費などは対象外になる場合があります。

そのため、最初に確認するのは介護サービス費だけではありません。

  • 年金収入
  • 預貯金
  • 保険
  • 借入
  • 公共料金
  • 通信費
  • サブスク
  • 住宅関連費
  • 介護保険の負担割合

家族が立て替える場合は、日付、金額、名目、レシートを残します。口約束の現金管理を続けると、あとで家族間のトラブルになりやすくなります。

判断能力の低下があるなら専門家相談も視野に入れる

親の判断能力が低下している場合、預貯金の解約、不動産の処分、継続的な財産管理は家族だけで判断しないほうが安全です。

成年後見制度は、認知症などで判断能力が十分でない人を法的に支援する制度です。ただし、申立後は家庭裁判所の許可なしに取り下げできず、後見等は原則として本人の能力回復または死亡まで続きます。希望した家族が必ず後見人に選ばれるとは限りません。

家族信託も、財産管理の選択肢として紹介されることがあります。ただし、介護保険制度そのものではありません。預貯金や不動産の管理がテーマになったら、司法書士、弁護士、信託に詳しい専門家へ個別相談する前提で考えます。

見守りサービスを考えるタイミング

見守りサービスを検討するのは、次のような不安が出てきたときです。

  • 別居で駆けつけに時間がかかる
  • 物忘れや行方不明の不安が出てきた
  • 服薬管理が怪しい
  • 転倒してもすぐ気づけない
  • 緊急時の医療情報が整理されていない

ただし、商用サービスを比較する前に、自治体の救急医療情報キット、見守りシール事業、認知症関連の地域支援事業がないか確認します。そのうえで、家族だけでは見守りが足りない場合に、駆けつけ型、訪問型、センサー型、カメラ型などを比較します。

実家の片付けは、転倒予防から始める

実家の片付けは、思い出の品や不用品処分から始めるよりも、まず転倒予防から考えます。

確認したい場所は、玄関、廊下、階段、浴室、トイレです。床に物が多い、滑りやすいマットがある、暗い、段差が分かりにくい、手すりの前に物が置いてある、といった状態は早めに直します。

介護保険の住宅改修では、手すり設置や段差解消などが対象になる場合があります。ただし、事前申請や対象工事の条件があるため、自己判断で工事する前に自治体やケアマネジャーへ確認します。

固定費を見直す理由

介護が始まると、介護サービス費だけでなく、通院交通費、日用品、見守り機器、通信費、家族の移動費などが増えます。高額介護サービス費のような仕組みがあっても、すべての支出が対象になるわけではありません。

親世帯と自分世帯の固定費を早めに見直しておくと、介護に使える余力を作りやすくなります。電気、ガス、通信、サブスク、保険などは、介護準備と並行して確認したい項目です。

今日やること

  • かかりつけ医、通院先、薬局、服薬一覧、緊急連絡先を1枚にまとめる
  • 最近3か月の変化を、歩行、転倒、物忘れ、家事、買い物、金銭管理の6項目で書き出す
  • 親の住所地を担当する地域包括支援センターを調べる

1週間以内にやること

  • かかりつけ医を受診し、気になる症状や生活の変化を共有する
  • 地域包括支援センターへ電話し、現状相談か、基本チェックリストか、要介護認定申請かを相談する
  • 実家の玄関、廊下、浴室、トイレの危険箇所を確認する

1か月以内にやること

  • 家族会議を開き、主連絡担当、通院同行担当、実家訪問頻度、費用立替ルール、緊急時の駆けつけ順を決める
  • サービス導入が見えているなら要介護認定を申請する
  • 自分の勤務先の介護休業・介護休暇・柔軟勤務制度を確認する
  • 親世帯と自分世帯の固定費を確認する

家族会議で話すこと

家族会議では、誰か1人が全部を抱える前提にしないことが大切です。

最低限、次のことを話します。

  • 親本人はどこで暮らしたいか
  • 誰が病院や包括からの連絡を受けるか
  • 誰が通院に付き添うか
  • 誰が実家に行けるか
  • 費用を誰が一時的に立て替えるか
  • 通帳や印鑑、保険証、介護保険証の保管場所
  • 緊急搬送時の対応
  • 判断能力が低下した場合の相談先

よくある質問

親がまだ元気そうでも、地域包括支援センターに相談していいですか

はい。地域包括支援センターは高齢者の総合相談窓口です。介護が始まる前の不安や、制度の確認、相談先の整理にも使えます。

要介護認定を受けないと何も使えませんか

必ずしもそうではありません。自治体によっては、基本チェックリストから総合事業につながる場合があります。一方で、介護保険サービスの利用が現実的な段階なら、要介護認定の申請を早めに検討します。

要支援と要介護の違いは何ですか

要支援1・2は介護予防サービス中心、要介護1〜5は介護サービス利用の区分として扱われます。要支援では地域包括支援センター、要介護ではケアマネジャーがケアプラン作成の中心になることが多いです。

ケアマネジャーにはいつ相談しますか

要介護認定後が基本ですが、認定前から地域包括支援センターなどを通じて調整を始める考え方もあります。最初は地域包括支援センター、サービスが具体化したらケアマネジャー、という順番で考えると分かりやすいです。

介護休業を取れば何とかなりますか

介護休業は、仕事と介護を両立する体制を整えるための準備期間です。自分が介護を抱え込むための期間ではありません。地域包括支援センター、ケアマネジャー、家族、勤務先の制度を組み合わせて考えます。

親のお金を子が代わりに管理してよいですか

日常的な立て替えや支払い補助でも、日付、金額、名目、レシートは残しておきます。判断能力の低下がある場合や、不動産、預貯金の解約、継続的な財産管理が必要な場合は、成年後見や家族信託などの専門家相談の領域になります。

まとめ

親の介護準備で最初にやることは、施設探しやサービス契約ではありません。親の状態を具体的に整理し、地域包括支援センターや自治体窓口へ相談できる状態を作ることです。

今日できることは、医療情報と緊急連絡先をまとめ、最近の変化を書き出し、親の住所地の地域包括支援センターを調べることです。そのうえで、要介護認定、仕事との両立、お金、見守り、実家の安全確認へ順番に進めていきます。