実家じまいを考え始めたとき、最初にやることは片付け業者を探すことではありません。先に確認したいのは、親本人の意思、家族の合意、登記名義、重要書類、空き家になった場合の管理責任です。

実家は、家財が置いてある場所であると同時に、親の生活拠点であり、不動産という大きな財産でもあります。順番を間違えると、親の意思を無視した処分、きょうだい間の不信感、相続登記の放置、空き家管理の負担、不用品回収の高額請求などが重なりやすくなります。

この記事では、実家じまいを始める前に確認する順番を整理します。法律・税金・登記の個別判断は、司法書士、弁護士、税理士、自治体窓口などへ確認してください。

最初に確認すること

まず見るのは、家の中の荷物ではなく、次の6つです。

  1. 親本人の意思
  2. 家族・きょうだいの合意
  3. 土地と建物の登記名義
  4. 固定資産税、住宅ローン、火災保険、公共料金
  5. 権利証、登記識別情報、通帳、保険証券などの重要書類
  6. 貴重品、写真、仏壇、車、農地・山林などの扱い

親が実家の所有者であれば、売却、賃貸、解体、大きな片付けは親の財産に関わる話です。子ども側が「もう使わないから」と思っても、本人の意思確認なしに進めるのは避けてください。

きょうだいがいる場合は、実務を誰が担うかも早めに決めます。現地に近い人だけが片付け、役所、業者対応を引き受ける形になると、後で不満が出やすくなります。

親が元気なうちに聞くこと

親が判断できるうちに確認したいのは、実家を「どう処分するか」だけではありません。

  • できれば住み続けたいか
  • 施設入居や同居になった場合、家を残したいか
  • 売却して介護費や生活費に充ててもよいか
  • 大切に残したいものは何か
  • 通帳、保険、権利証、印鑑はどこにあるか
  • きょうだいや親族に伝えておきたいことはあるか

聞き方は大切です。「この家をどうするの」と迫るより、「入院や施設入居で慌てないように、大事な書類の場所だけ一緒に確認したい」と切り出すほうが話しやすいことがあります。

親の判断能力が低下している場合、不動産売却や解体、預金の大きな引き出しを家族だけで進めるのは危険です。成年後見人などが本人の居住用不動産を処分する場合にも、家庭裁判所の許可が必要になることがあります。

登記名義を確認する

実家じまいで早めに確認したいのが、土地と建物の登記名義です。

親名義だと思っていた実家が、亡くなった祖父母名義のままになっていることがあります。共有名義になっている場合もあります。名義が整理されていないと、売却、賃貸、解体、担保設定などの判断が進めにくくなります。

2024年4月1日から、相続登記は義務化されています。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になる可能性があります。2024年4月1日より前に発生した相続も対象です。

また、2026年4月1日からは、所有者の住所や氏名の変更登記も義務化されています。住所変更や氏名変更があった場合は、変更日から2年以内の登記が必要です。

登記名義が古い、相続人が多い、きょうだい間で意見が割れている場合は、早めに司法書士や弁護士へ相談してください。

空き家になる前に見ること

親が施設に入る、同居する、長期入院するなどで実家が空き家になる場合、管理の問題が出ます。

空き家を放置すると、次のようなリスクがあります。

  • 雨漏り、外壁、屋根の劣化
  • 雑草や庭木の繁茂
  • 害虫や害獣
  • 郵便物の放置
  • 防犯上の不安
  • 近隣への迷惑
  • 管理不全空家や特定空家として行政指導を受ける可能性

空家法では、放置すると危険な状態になる空き家が行政指導や勧告の対象になることがあります。勧告を受けると、住宅用地の固定資産税軽減が受けられなくなる可能性があります。

ここで「固定資産税が必ず6倍になる」と断定するのは正確ではありません。小規模住宅用地で固定資産税の課税標準が6分の1に軽減されていた場合、特例が外れることで土地の固定資産税負担が大きく増える可能性がある、と理解してください。

片付け業者を呼ぶ前にやること

不用品回収や遺品整理を依頼する前に、家族で次を確認します。

  • 残すもの、処分するもの、判断保留のもの
  • 通帳、印鑑、保険証券、権利証、契約書
  • 現金、貴金属、時計、切手、古銭、骨董品
  • 写真、アルバム、手紙
  • 仏壇、位牌、神棚
  • 車、農機具、山林や農地に関する資料

家庭から出る廃棄物を回収するには、市区町村の一般廃棄物処理業の許可や委託が関係します。古物商許可や産業廃棄物収集運搬業許可だけで、家庭ごみの有料回収ができるとは限りません。

国民生活センターは、不用品回収や遺品整理で、高額な追加料金、見積りと違う請求、処分しない予定だった遺品の処分などに注意を呼びかけています。訪問購入では、不用品や着物の買い取りをきっかけに、貴金属を出すよう求められるトラブルもあります。

見積もり前には、写真、部屋数、荷物量、階段や駐車場の有無、処分しないものを整理し、追加料金が発生する条件を書面で確認してください。

売る・貸す・壊す・残す

実家の出口は、大きく4つあります。

売却する

管理負担を減らし、売却代金を介護費や生活費に充てられる可能性があります。一方で、登記名義、境界、建物状態、相続人の合意、税金の確認が必要です。

相続した空き家を売る場合、一定要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度があります。ただし、要件は細かく、必ず使える制度ではありません。売却前に税理士や不動産会社へ確認してください。

賃貸に出す

家を残しながら家賃収入を得る選択肢です。ただし、修繕、管理、入居者対応、空室リスクがあります。築年数が古い実家では、貸す前の工事費が大きくなることもあります。

解体する

倒壊や防犯、害虫など建物由来のリスクを減らせます。ただし、解体後に住宅用地特例が外れ、税負担が増える場合があります。解体前に、売却見込み、補助金、固定資産税、建物滅失登記を確認します。

空き家として管理する

家族の合意や売却準備まで時間を確保できます。一方で、換気、通水、庭木、郵便物、防犯確認などの管理が続きます。空き家管理を選ぶ場合も、期限を決めて見直すほうが安全です。

家族会議で決めること

実家じまいは、情報共有が弱いほど揉めやすくなります。最初の家族会議では、次を決めます。

  • 親本人に誰が話を聞くか
  • 登記や固定資産税を誰が確認するか
  • 書類や通帳、保険証券を誰が確認するか
  • 現地作業を誰が担うか
  • 業者見積もりを誰が取るか
  • 費用を親の財産から出すのか、子どもが立て替えるのか
  • 領収書や見積書をどこに保存するか

子どもが立て替える場合は、日付、金額、名目、領収書を残します。後で売却代金や相続財産から精算する可能性があるなら、家族間で書面や共有メモを残しておくと誤解を減らせます。

今日やること

今日できることは、業者探しではなく、情報を集めることです。

  • 親の意思を聞く日を決める
  • 固定資産税納税通知書を探す
  • 登記名義を確認する
  • 重要書類の保管場所を確認する
  • きょうだいに共有するメモを作る
  • 実家が空き家になる時期を見積もる
  • 自治体の空き家相談窓口を調べる

片付け、不用品回収、不動産査定、解体見積もりは、その後で十分です。

よくある質問

実家が亡くなった祖父母名義のままです。どうすればいいですか

相続登記義務化の対象になる可能性があります。相続人が増えている場合もあるため、法務局や司法書士に早めに相談してください。

親が認知症です。家族だけで実家を売れますか

家族だけで進めるのは危険です。本人の判断能力が不十分な場合、不動産売却などの契約行為は慎重な対応が必要です。成年後見制度や家庭裁判所の許可が関係する場合があります。

実家を解体すれば問題は解決しますか

建物由来のリスクは減りますが、固定資産税や売却見込み、補助金、建物滅失登記の確認が必要です。解体前に自治体や専門家へ確認してください。

不用品回収業者は何を見て選べばいいですか

見積書の内訳、追加料金の条件、許可や委託の有無、処分しないものの扱い、キャンセル料を確認します。困ったときは消費者ホットライン188へ相談してください。

まとめ

実家じまいで最初にやることは、家を片付けることではありません。親の意思、家族の合意、登記名義、重要書類、空き家管理の責任を確認することです。

そのうえで、売る、貸す、壊す、残すの選択肢を比較します。法律、税金、登記、不動産処分が絡む場合は、自己判断で進めず、自治体や専門家へ確認してください。