親の通院、入退院、見守り、手続きが重なると、「これ以上会社に迷惑をかけるなら、辞めるしかない」と感じることがあります。

ただ、退職届を出す前に確認したい制度と相談先があります。介護休業や介護休暇は、家族が自分だけで介護を抱え込むための制度ではありません。仕事を続けながら、介護保険サービス、家族分担、勤務先の制度を組み合わせる体制を整えるための選択肢です。

この記事では、介護離職を考える前に確認したい制度、会社へ相談する前に整理すること、社内外へ伝える順番をまとめます。会社ごとの制度差があるため、実際の取得条件、有給・無給の扱い、申請書類、締切は勤務先の就業規則と人事窓口で必ず確認してください。

先に結論

介護で仕事を辞めるか迷ったら、退職の判断より先に次の順番で確認します。

順番やること目的
1親の状態と必要な支援をメモする会社と外部支援に説明できるようにする
2地域包括支援センターへ相談する家族だけで抱え込まない体制を作る
3勤務先の制度を確認する介護休業、休暇、残業制限、時短などを把握する
4上司に就業継続の意思を伝える業務調整を始める
5人事へ正式に相談する申請手続き、給付、就業規則を確認する
6必要なら産業保健スタッフや外部窓口へ相談する心身の負担や不利益取扱いに対応する

大事なのは、「辞めるか続けるか」を一人で決めないことです。まず、仕事を続けたい意思を前提に、どの制度と外部支援を組み合わせられるかを確認します。

辞める前に確認する制度

仕事と介護の両立支援制度には、まとまって休む制度、短く休む制度、勤務時間を調整する制度があります。どれか一つだけで解決するというより、親の状態と仕事の繁忙に合わせて組み合わせます。

制度概要使いどころ
介護休業対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割取得できる制度入退院後の体制づくり、要介護認定、サービス契約、家族分担の整理
介護休暇対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日まで。時間単位でも取得可能通院付き添い、役所手続き、急な呼び出し
所定外労働の制限所定労働時間を超える残業の免除を請求する制度定時後に見守り、食事、服薬確認が必要なとき
時間外労働の制限1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働を制限する制度長時間残業を抑えたいとき
深夜業の制限午後10時から午前5時までの深夜業を制限する制度夜間勤務やシフト勤務が介護と合わないとき
短時間勤務等の措置短時間勤務、フレックスタイム、時差出勤、介護費用助成などから会社が措置を講じる制度継続的に勤務時間を調整したいとき

2025年4月1日からは、介護離職防止のため、会社側の個別周知・意向確認、相談体制整備なども強化されています。介護に直面したことを申し出た労働者に対して、会社は制度や申出先、介護休業給付金に関することを個別に知らせ、意向を確認する必要があります。

ただし、制度の対象外となる条件や申請期限は制度ごとに違います。労使協定で一部の労働者が対象外になる場合もあります。自分が対象になるかは、人事・総務へ確認してください。

介護休業は「介護に専念する期間」だけではない

介護休業という名前から、家族が仕事を休んで親の介護を全部引き受ける制度だと思いがちです。しかし、現実的には、休業期間を次の準備に使うほうが重要です。

  • 地域包括支援センターへ相談する
  • 要介護認定の申請を進める
  • ケアマネジャーと面談する
  • デイサービス、訪問介護、ショートステイなどを検討する
  • 通院、服薬、見守り、お金の管理を家族で分担する
  • 勤務先と復職後の働き方を調整する

介護は終わりの時期を読みにくいものです。93日を「自分が付ききりで介護する期間」として使い切ると、その後に働き続ける体制が残りません。休業する場合も、仕事と介護を両立する仕組みを作る期間として考えます。

介護休業給付も確認する

介護休業を取得する場合、雇用保険の要件を満たすと介護休業給付の対象になることがあります。給付額は、原則として休業開始時賃金日額に支給日数をかけた額の67%で計算されます。

申請は原則として事業主を経由して行います。ただし、本人が希望する場合は本人が手続きを行うことも可能とされています。必要書類や期限、賃金が支払われた場合の扱いは個別事情で変わるため、人事とハローワークで確認します。

注意したいのは、介護休業中の社会保険料や住民税の扱いです。育児休業とは違い、介護休業中は社会保険料が当然に免除されるわけではありません。無給になる場合でも、給与明細で引かれていた健康保険、厚生年金、介護保険、住民税の支払い方法を事前に確認してください。

会社によっては、休業中に本人負担分を振り込む、復職後に精算する、給与が出る月にまとめて調整するなど扱いが異なります。休業前に「いつ、いくら、どの方法で払うか」を書面やメールで残しておくと安心です。

会社へ相談する前に整理すること

会社へ相談するときは、「親が大変なので休みたい」だけでは、上司も人事も具体的な調整をしにくくなります。先に、事実と希望を分けて整理します。

整理することメモする内容
親の状態年齢、同居・別居、病名、通院先、要介護認定の有無、最近の変化
必要な支援通院付き添い、服薬確認、買い物、見守り、入浴、手続き
休む必要がある日入退院日、通院日、認定調査、ケアマネ面談、サービス契約日
継続勤務の意思仕事を続けたいこと、退職ではなく調整を相談したいこと
希望する調整介護休暇、介護休業、残業免除、時差出勤、短時間勤務、在宅勤務など
いつまでの見通しまず1か月、認定結果まで、退院後2週間など仮の区切り

完璧な見通しは不要です。介護は急に変わります。だからこそ、「現時点で分かっていること」と「今後変わりそうなこと」を分けて伝えます。

介護準備の全体像を先に整理したい場合は、親の介護準備で最初にやることチェックリストも確認してください。

会社に伝える順番

会社への相談は、基本的には業務調整と制度手続きを分けて考えます。最初から退職の話にせず、「働き続けるための相談」として始めます。

1. 直属の上司

まずは、日々の業務を調整する直属の上司に伝えます。

伝える内容は、詳しい病名や家庭事情のすべてではありません。業務に影響する事実と、働き続けたい意思です。

たとえば、次のように伝えます。

親の通院と介護サービスの調整が必要になりました。退職ではなく、仕事を続ける前提で相談したいです。今月は通院と認定調査で数回休む可能性があります。人事制度も確認しながら、業務調整を相談させてください。

上司には、急な休みが出そうな時期、残業が難しい曜日、引き継ぎが必要な業務を共有します。

2. 人事・労務

次に、人事・労務へ制度の正式確認をします。

確認することは、次の通りです。

  • 介護休業、介護休暇の申請方法
  • 対象家族や要介護状態の確認書類
  • 有給、無給、給与控除の扱い
  • 介護休業給付の手続き
  • 社会保険料、住民税の支払い方法
  • 短時間勤務、時差出勤、在宅勤務など会社独自制度
  • 休業中と復職後の連絡方法

法定制度は全国共通の最低基準ですが、会社独自の上乗せ制度がある場合もあります。就業規則、介護休業規程、申請書式を確認しましょう。

3. 産業保健スタッフ

介護と仕事で眠れない、体調を崩している、集中力が落ちている場合は、産業医、保健師、社内カウンセラーなど産業保健スタッフにも相談します。

介護の問題は、親だけでなく働く本人の健康問題にもなります。長時間労働、睡眠不足、メンタル不調がある場合、勤務時間の調整や業務負荷の見直しが必要になることがあります。

4. 社内相談窓口

会社に両立支援窓口、ハラスメント相談窓口、コンプライアンス窓口がある場合は、必要に応じて使います。

「介護を理由に評価が下がるのではないか」「制度利用を嫌がられた」「退職をほのめかされた」と感じる場合は、記録を残して相談します。日時、相手、発言、こちらの申出内容をメモしておきます。

5. 外部相談先

社内で相談しても進まない、不利益な扱いを受けている、制度利用を拒まれていると感じる場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)など外部相談先も確認します。

いきなり対立するためではなく、制度上どう考えるべきかを客観的に確認するための相談先です。

外部支援へ早くつなぐ

仕事を続けるためには、会社の制度だけでは足りません。親の生活を支える外部支援につなぐことが必要です。

最初の相談先は、親の住所地を担当する地域包括支援センターです。地域包括支援センターは、高齢者の総合相談窓口で、介護、福祉、医療、権利擁護、介護予防などの相談ができます。

相談するときは、自分の住所地ではなく、親が住んでいる市区町村で探します。遠方介護の場合も、親の住所地の地域包括支援センターへ連絡します。

相談前には、次をメモしておきます。

  • 親の住所、年齢、同居・別居
  • 最近困っていること
  • 通院先、服薬、持病
  • 要介護認定の有無
  • 家族が支援できる頻度
  • 自分の勤務時間、休みやすい曜日、休みにくい時期

ケアマネジャーとつながった後は、自分の仕事の都合も隠さず伝えます。日中は仕事で行けない、急な呼び出しが難しい、残業がある曜日がある、といった事情を共有しないと、家族が動ける前提のケアプランになってしまうことがあります。

地域包括支援センターへ相談するタイミングは、地域包括支援センターに相談するタイミングでも詳しく整理しています。

退職前に確認すべきリスク

退職が必要な事情もあります。職場環境、親の状態、家族関係、自分の健康によっては、働き方を大きく変える判断が必要になることもあります。

それでも、介護だけを理由に急いで退職する前に、次のリスクは一度書き出してください。

リスク確認すること
収入退職後の生活費、親の介護費、自分の住宅費、貯蓄の持続期間
年金厚生年金から外れる期間、将来の年金額への影響
再就職介護が長期化した場合のブランク、年齢、雇用形態
家族分担退職した人に介護が集中しないか
介護の長期化何年続くか分からない前提で資金と体力が持つか
孤立仕事を失った後、相談先や社会との接点が減らないか

「辞めないほうがよい」と断定する必要はありません。ただ、退職は一度出すと戻しにくい判断です。退職届を出す前に、勤務先制度、地域包括支援センター、家族会議、家計の見通しを確認してからでも遅くありません。

介護で時間が圧迫されている場合は、仕事の進め方を見直すことも助けになります。40代・50代がAIを学び直すなら何から始めるかでは、仕事効率化の入口を整理しています。

よくある質問

要介護認定の結果が出る前でも介護休業や介護休暇は使えますか?

制度上の「要介護状態」は、介護保険の要介護認定と完全に同じ意味ではありません。負傷、疾病、心身の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態が対象です。認定結果待ちでも対象になり得るため、人事へ状況を説明して確認してください。

介護休業と介護休暇はどう使い分けますか?

介護休業は、まとまった期間で体制を整えるために使います。介護休暇は、通院付き添いや役所手続きなど、スポットで休む場面に向いています。急な呼び出しが多い時期は介護休暇、退院後のサービス調整や家族分担づくりは介護休業、と分けて考えると整理しやすくなります。

上司にどこまで家庭事情を話すべきですか?

詳しい病名や家庭内の事情をすべて話す必要はありません。業務調整に必要な範囲で、休む可能性がある日、残業が難しい時間、今後の見通し、仕事を続けたい意思を伝えます。制度の詳細や書類は人事へ確認します。

会社に制度利用を言い出しにくいです

2025年4月から、介護に直面した労働者への個別周知・意向確認や、相談体制の整備などが会社側の義務として強化されています。まずは「退職ではなく、仕事を続けるための相談」と伝え、上司と人事に分けて相談してください。

介護休業中のお金が不安です

介護休業給付の対象になるか、人事とハローワークで確認します。給付だけでなく、社会保険料、住民税、賞与、社内手当、復職後の給与控除も確認が必要です。休業前に、1か月ごとの収入と支払いを表にしておくと判断しやすくなります。

まとめ

介護離職しそうなときに最初にすることは、退職届を書くことではありません。親の状態、必要な支援、休む必要がある日、仕事を続けたい意思、会社へ求めたい調整を整理することです。

そのうえで、直属の上司、人事、産業保健スタッフ、社内相談窓口、外部相談先の順に相談します。同時に、親の住所地の地域包括支援センターへつなぎ、家族だけで抱え込まない体制を作ります。

制度は会社ごとの差があります。この記事を入口にしつつ、実際の取得条件や手続きは、勤務先の就業規則、人事窓口、ハローワーク、地域包括支援センターで確認してください。